5W2D プレママ終了のお知らせ:流産しました。

2015/01/09 | かづよ備忘録 | kazuyo

1年に及ぶ不妊治療の末、体外受精でやっと妊娠した。

無題

体外受精はなかなか大変だった。
受精卵を採取する前から、内診台で他人にデリケートゾーンを
ほじほじされる屈辱、毎日ホルモンを調整する薬を飲んだり、
子宮内膜を厚くするというサプリメントを飲まされたり
採血に次ぐ採血、ホルモン注射、排卵誘発剤の使用、毎回X万円の出費、
体外受精するためのXX万円という費用、会社を遅刻したり
休んだりすること、そのための業務コントロール。

やっとのことで迎えた採卵日。

採卵は、超音波画像を見ながら採卵専用の針をアソコから入れて
膣壁を突き破って、卵胞を刺し、排卵前の卵胞から卵細胞と
卵胞液をいっしょに吸引するというもの。

痛みの苦手な私は麻酔を使用しての採卵だった。
看護師さんに向けて下半身丸出しのまま待たされること10分。
医師とともに何人かの看護師が手術室に入ってきて、
両手を拘束されて左腕に注射用の針を刺され、右腕にバイタルを
測る装置をつけられた。
局所麻酔かと思いきや、静脈麻酔で、寝ている間に手術が進行するらしい。

どろり…とした冷たい液体が左腕に滑り込んできて、
目を閉じるよう医師の指示があって。
次の瞬間には拘束が解かれていた。

「終わりましたよ」

看護師さんの声。
あっけなかった。麻酔明けはふらふらすると聞いていたけど
目覚めは意外とクリアだった。後から聞いた話だけど、麻酔が切れる直前に
「開店祝いにみんなが来るから、私、行かなきゃ」と言いながら
拘束を振りほどいて起き上がろうとしたらしい。
ちっとも覚えてないよ…。赤面しながら言い訳する私をなだめるように
「よくあることですから」と一言。

その日採れた卵子は全部で6つ。
1つは変形で使えず。残り5つに受精させ、培養することに。

治療に関しては夫婦で喧嘩ばかりだったので
「なんかうれしそうだね。嫁ちゃんが笑顔でうれしいよ」という
夫の言葉がうれしかった。なんだか少し前進した気がしてほっと
していたんだと思う。

——————–

それから3日後。受精卵を胎内に戻す日。

受精卵は4つ(1つは受精しなかった)。どれもグレードは
あまりよくないという。4つのうち状態のよい2つを胎内に。
投薬と黄体ホルモン注射数回を経て、2週間後の診察で
妊娠の判定が出るらしい。

もう、祈るしかない。

——————–

妊娠判定の出る前々日、つい我慢しきれずに妊娠検査薬を使う。
結果:陰性。
あぁ、ここまで治療してもダメなのか…と絶望感を抱く。
でもどこかであきらめられなくて、診察までは禁酒を
貫いておこうと自分を奮い立たせる。

——————–

妊娠判定日。
絶望的な気持ちで並ぶ病院の待合室。時間が重い。

診察の結果は……。なんと陽性!
もらった紙には「本日は、ご妊娠、4週3日です」と書かれている。
医師は言った。
「反応が薄いのですが、当院では一応妊娠と判定いたします」
なんとも釈然としない言い方だけど、とりあえずは妊娠したらしい。

予定日は2015年8月21日。夫の誕生日の3日後。
「もしかしたら同じ誕生日になるかもね」なんてLINEで
夫に報告して、やっとなんとなく実感がわいてきた。

翌日くらいからじわじわと実感が襲ってきて、
2~3日はうれしくて、私はベビーカー、夫は名前辞典を見て
にやにやしていた。

身体が常にあったかい。熱が身体の内側にきちんと留まっている
感じ。卵を温めている親鳥の気持ちがすごくすごくよくわかる。

——————–

判定から4日目。
なんとなく下腹部に違和感。おなかが張っている感じがする。
妊娠後期に「おなかが張る」のはわかるけど、超初期の自分には
この違和感が何を意味するか、よくわかっていなかった。

妊娠5週目に入ると、無痛分娩の予約が埋まってしまって
取れなくなると聞いていたので、無痛分娩を行う病院で予約を
取りがてら、診察を受ける。

赤ちゃんの姿はまだ見えない。
「大丈夫ですよ。この時期はまだ胎嚢が見えなくても。
 来週の診察の頃には見えてるかな」
医師の言葉が遠くに聞こえる。おなかがパンパンに腫れていて怖い。

——————–

判定から6日目。ついに出血が始まる。
うろたえて母に電話するも、どうしようもない。
下腹部の痛みと出血におびえて、夫に生理用品を買いに行ってもらう。

普段絶対に生理用品なんて買ってきてくれるような感じではない
夫だけど、このときばかりはコンビニに走ってくれた。

明日、診察。着床時出血だと自分に言い聞かせてベッドに
横たわる。でも、心配で眠れない。

——————–

翌朝。出血が止まらない。
むしろ量が増えている。下腹部には生理痛のような痛み。

朝イチで病院へ。
いつもは長蛇の列ができているほどの人気医院なのに、この日は
なぜか空いていて、すんなり名前を呼ばれた。

「流産してますね」

内診台で診察されている最中も滴り落ちる鮮血。
でも、超音波で映し出された子宮内には胎嚢のような影が。
あきらめきれない私と、「それは血の塊です」と冷静に話す医師。

昨日の晩から心のどこかで「ダメかもしれない」と感じていた。
だから覚悟はできてるはずだった。
喉の奥から搾り出すように「ありがとうございます」と医師に言い、
診察室を後にした。

その後採血した。
流産か子宮外妊娠か、判定するために血を抜かれた。

仕事中の夫に電話した。
病院のしんとした廊下で泣きながら話した。
夫も少し泣いていたようだ。

流産は思ったよりもつらかった。
こんなことなら、体外受精で失敗してた方が何倍もマシだと思った。
がっかりはするだろうけど。

一度は赤ちゃんがおなかの中にいたのかと思うと
失った悲しみはなんともいえないものだった。

妊婦がたまらなく憎かった。子ども連れの母親を見ると腹が立って
仕方なかった。「環境が変わればきっとできるよ」と言う人に
本気で「死ね」と念じていた。今なら、マタニティマークをつけた
妊婦をホームから突き落としたという人の気持ちがよく理解できた。

乳児が待つ、我が家に帰りたくなかった。
だからといって仕事ができるような気分でもなかった。
下腹部の痛みがあったし、出血も続いていたので会社を休み
実家でごろごろしてから、夜に帰宅した。

夫の会社は1年で最も忙しい時期だったのだけど、
飛んで帰ってきてくれた。夫の優しさがうれしかった。
声を上げて泣いた。

誰とも会いたくなくて、部屋で夫が温め直してくれた昨日の残り物を
食べた。なんだかぼんやりしている。気を抜くと涙が止まらない。

——————–

出血して3日目。小さな出産をした。

話には聞いていたけど、流産すると女は小さい出産をする。
トイレで血の塊を産んだとき、身体の中から本当に
いなくなっちゃったんだなぁと思ったら涙が止まらなかった。

おなかの張りは徐々に薄らぎ、小さな出産のあとは
少しずつ出血量が減っていった。

——————–

あれから少し時間が経って、こうして当時のことを
書くことができるまでには持ち直した。
…とはいえ、書いている最中も思い出すと涙が出る。

先日は、夫と水子供養参りもした。
夫が言い出したのだ。優しいなぁ。
私は忘れようとしていたのだと気がついた。

でも、お参りしながら、この子が私たちのところに来た
意味を知った。あの子は、私たち夫婦に「お互いを思いやる」
ことを思い出させてくれるために来てくれたんだなと。

不妊治療は、夫婦が不仲になる最大要因だと思う。
周りからもそんな話を聞くし、そういうデータもたくさんある。
私たちも離婚の危機が何度かあった。

でも、治療の最後の最後にちびたんが「お互いを思いやる」ことを
思い出させてくれた。本当にありがとう。

——————–

ウチは治療しないと子どもをもうけることが難しい
カップルですが、もう積極的に治療はしないことにしました。
この1年で、多くのお金を使いすぎたためです。
もっと全面的な補助があればいいのにと心から思います。
自費負担がなく治療ができるなら、おそらく治療を続けていたと
思います。

これから「子どものいない人生」について考えを切り替えて
いかねばなりません。これは容易ではないでしょう。

最後になりますがこれはみなさんにお願いです。
私に限らず、不妊治療中の人や流産した人に
「いつかできるよ」とか
「自分も治療したけど今は授かったからきっとできるよ」とか
「環境変わったり、気持ちがリラックスしたらできるよ」とか
無責任な慰めはやめてください。

「いつかできるかも」という“期待”が一番つらい。
“あきらめられない”ということが のたうち回るほど苦しい。

それらの人への言葉は
「大変だったね。おつかれさま」
というのがもっともマシなんだなと思う。

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