神話を巡る冒険:伊勢・出雲巡礼記 【諏訪大社@長野県】

伊勢・出雲に車で行くことになったのだけど、その過程で父が「ちょっと遠回りだけど諏訪大社に寄って行きたい」と言い出したので、寄った諏訪大社。

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長野県の諏訪湖の周りにある下記2社4宮が「諏訪大社」です。
■上社(かみしゃ)
・本宮(ほんみや)  長野県諏訪市中洲宮山 御祭神:建御名方神(タケミナカタ)
・前宮(まえみや)  長野県茅野市宮川 御祭神:八坂刀売神(ヤサカトメ)
■下社(下社)
・秋宮(あきみや) 長野県諏訪郡下諏訪町武居 御祭神:八坂刀売神(ヤサカトメ)
・春宮(はるみや) 長野県諏訪郡下諏訪町下ノ原 御祭神:八坂刀売神(ヤサカトメ)
※ヤサカトメは、タケミナカタの妃である。

今回は、上社本宮を参拝しました。

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御柱祭 公式WEBサイトより

諏訪大社といえば、御柱祭(おんばしらまつり)が有名。7年ごと(寅年と申年)に行われるこの祭りは、心の御柱(しんのみはしら)となる長さ約17m、直径1m余り、重さ約10トンの巨木を山から伐り出し、上社の本宮と前宮、下社の春宮と秋宮まで運ぶ神事です。運ぶ際は、山肌を引きずり下ろす際も、川を渡る際も若い男性衆が巨木の上にまたがり、彼らを乗せたまま移動する。とにかくすごい迫力らしい。

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こちらは諏訪大社上社本宮の拝殿。諏訪大社には本殿がありません。代わりに上社は御山を御神体とし、秋宮は一位の木を、春宮は杉の木を御神木として拝しているという珍しい造り。古代の神社には社殿がなかったとも言われており、その代わりに磐座(いわくら)や巨木、山などを神の依代(神霊が宿るもの)として祀っていました。諏訪大社の祭祀が始まった時期は不明だけれども、文献上は『日本書紀』に691年8月に「信濃須波」の神を祀ると書かれており、それ以前の様式を今に伝えているとも言われています。

御柱祭の際、伊勢神宮の遷宮と同じように鳥居なども含めたすべての社殿が建て替えられていましたが、江戸時代以降は4本の御柱と東西の御宝殿が交互に建て替えられるだけになりました。

2016年は御柱祭が行われる年。4月、5月にあるので、ぜひ観に行ってみたいなぁ。※遷座祭りは6月15日。

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御柱は各社に4本ずつ配され、本宮は拝殿に向かって左手前、左奥、右奥、右手前に立っています。

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1827年に建立された神楽殿には、同じく1827年に奉納された当時日本最大の太鼓と、近年奉納された太鼓が安置されています。この太鼓は毎年元旦に打ち鳴らされるのだそう。

神話から読み解く「諏訪大社」

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さてここからが本題。
古事記に登場する諏訪大社に関連する神様は、赤い丸で囲った建御雷之男神(タケミカヅチ)建御名方神(タケミナカタ)という2柱の神様。

昔、大国主命(オオクニヌシ)が葦原中津国(あしはらのなかつくに)……つまり昔の日本を平定したあと、天照大神(アマテラス)はタケミカヅチに「いい国になったからあそこも私たちが治めましょ。地上に降りて、オオクニヌシに国を譲ってもらってきて」と命令しました。

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タケミカヅチは、伊邪那岐命(イザナギ)が火神迦具土神(カグツチ:火の神)を斬り殺した時(※)に滴り落ちた血から生まれた神様で、刀剣の神とされ、軍神として崇められているようなとても強い神様。そんな神様を遣いに行かせるというのは、脅しですよね。ダメ、恐喝♡

※イザナギの妹であり嫁でもあった伊邪那美命(イザナミ)は、カグツチを産んだことで陰部をやけどし、それが元で命を落とす。カグツチのせいで最愛の 嫁が死んだことが許せず、イザナギはカグツチを刀で斬り殺してしまうのだ。シスコン怖い。

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そんなマッチョのタケミカヅチが出雲まで降りてきて、国譲りを迫ってきたものだから、オオクニヌシはびびった。自分はかなわないけど、息子ならなんとかしてくれるかも……と、息子に判断を任せた。

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というわけで、タケミカヅチはオオクニヌシの息子であり祭祀を司る神である事代主命(コトシロヌシ)に事情を説明したところ「この国は天の神に譲るべきです」とあっさり退いて、天の逆手(あまのさかて)という呪いの拍手を打ち鳴らすと海に身を投げてしまった。

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「まだモノ申す息子はいるのか?」とオオクニヌシに聞いたところ、「もう一人、建御名方神(タケミナカタ)という息子がおります」という。このタケミナカタという神様は、武力を司っていました。そこでタケミカヅチがタケミナカタに国譲りを迫ったところ「嫌なこった。力で勝負しようぜ」ということに。

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ところが、タケミナカタはあっという間に腕をもぎ取られ、逃げ出すハメに。出雲から逃げに逃げたが、とうとう諏訪で追いつめられ、服従させられることとなったのです。その際「この地から一歩も出ません!」と約束させられました。こうしてタケミナカタが諏訪大社に祀られるようになったのだとか。

憶測だけど、中央から追いやられて可哀想だから、地方の神として祀ることで怒りを鎮めようとしたのかなと推測。

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このとき、2柱が戦ったのが相撲の始まりと言われており、境内には幕末の名力士の雷電右衛門の銅像が奉納されているなど、諏訪大社は相撲発祥の地として尊ばれています。

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それにしても、なぜ戦敗した神様を祀っているのか?縁起悪くないのかなと思って調べたところ、面白いことがわかりました。

諏訪地方に伝わる縁起譚(えんぎたん)の「諏訪大明神絵詞(すわだいみょうじんえことば)」によると、タケミナカタは諏訪に来て、先住の地主神や諏訪湖の龍神(水の神)などの神々を征服して鎮座した、とその武威が強調されているのだそう。この武勇を讃え、とくに鎌倉時代以降は霊験あらたかな軍神として崇敬され、諏訪信仰が広がり、全国各地に諏訪神社が祀られるようになったのだといいます。

そもそも、アマテラスをはじめとした天津神は、天皇の威光を知らしめるために後から創られた神様。日本神話が掲載されている古事記が書かれるまで……いや書かれてからしばらくの間、非常にマイナーな存在でした。

ではその前まで、人々は何を信じていたかといえば、土着の神への信仰がありました。土着の神への信仰は天下統一を目論む者とって邪魔でしかないため、それらを取り込み、さらによい神にすり替え、さらにその神の子孫である天皇が国を統べることによって、民衆はより幸せになれると説いたのです。

天津神であるタケミカヅチはそれでいいけど、負かされたタケミナカタにしてみれば負け犬のままでは格好がつかないし、人々から信仰を集めることもできない。というわけで、その土地のまつろわぬ神(神話などにおける神々の争いや平定事業において、抵抗し、帰順しない神のこと)を平定したという武功を強調する必要があったのではないだろうか。

諏訪大社の御祭神はタケミナカタになるまでは、ミシャグチ神(大和民族と先住民の境界に棲む神。疫病・災害などをもたらす悪神・悪霊が聚落に入るのを防ぐとされる)、蛇神ソソウ神、狩猟の神チカト神、石木の神モレヤ神などの土着の神ではないかと言われています。元々諏訪地方の土着神だったミシャグジ神が、古事記や日本書紀などの神話に取り入れられて、タケミナカタになったのではと考える学者もいるのだそう。……なんか納得です。

神話を巡る冒険:伊勢・出雲巡礼記

0.神話を巡る冒険:伊勢・出雲巡礼 【序章】
1.諏訪大社上社本宮
2.猿田彦神社・佐瑠女神社
3.元伊勢 籠神社・真名井神社【要約版】
 ちょっと難しい元伊勢 籠神社・真名井神社(前編)
 ちょっと難しい元伊勢 籠神社・真名井神社(後編)
4.伊勢神宮(外宮)
5.伊勢神宮(内宮)
6.出雲大社
7.須佐神社
8.伊弉諾神宮
9.熱田神宮

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